バガボンド 全巻

簡単にいうと、宮本武蔵の話です。原作があるので、先がわかっている物語なのですが、この作品は作者である「井上雄彦」先生の気持ちなどを大いに取り入れて哲学的なものを交えたマンガになっているので、見どころ満載です。
剣豪になるために自分の腕を磨き、強い人を求めて京、都へ流浪します。強い相手と戦う都度、知らず知らずのうちに自分自身の精神も一緒に鍛える宮本武蔵。その成長の様が、現代を生きる私たちにも言えることがあり教えられることがたくさんあります。

 

主人公が剣についてずっと考えているところ。剣のみに生きる!!という人物像なのに、剣を通じて生き方や人との関わり方、優しさなどを学んでいき、どんな強豪でも人間臭い部分があるんだなと思わせられます。そして、その周りのあたたかい人たちに見守られている主人公もまたあたたかく、人間臭い人物なところが魅力的です。

 

ただの戦闘マンガと思いきや、人の心理描写、表情の一つ一つが繊細に描かれていて、登場人物一人一人の気持ちが丁寧に描写されています。それぞれに、それぞれの立場や気持ちがあるのだけど、どれもその言動の理由がわかって歯痒かったり嬉しかったり、気が付けばキャラクターとともに泣き笑いしている自分がいました。
また、「佐々木小次郎」が作者の意向で耳が不自由な設定にされているのですが、その描写も見事で、もしも耳が不自由でなかったら…と想像するのも楽しいです。
一番はまる理由は、「想像力をかきたてられる」ことです。

 

この漫画の初期の部分で、宮本武蔵に沢庵という坊主が「一枚の葉を見ていては一本の木は見えぬ。一本の木を見ていては森全体は見えぬ」のような言葉をかけている場面がありました。初めて読んだ当時私は中学生でしたが、アラサーになった今でも忘れずにその時受けた衝撃を鮮明に覚えています。
時間がなくて焦って物事を成し遂げようとするとき、イライラして自分が見えずにそれでも前に進まないといけない時、物事が全然解決しなくてどうしようもないとき、様々な場面でこの言葉が私を救ってくれました。そして、自分が今どの位置にいるか、図るスケールとなってくれました。
「今自分が見えているものは、葉の部分か。木の部分か。森の部分か。」どの部分を見ているかによって答え(解決方法)が変わってくるので、考えれば考えるほどわからなくなることもありますが、考え続けることを教えてくれた「バガボンド」は私にとってバイブル本です。
巻が進むにつれて登場人物(特に宮本武蔵と沢庵坊)の言っていることが難しくなりますが、それさえその時の自分の心情によってとらえ方が変わる面白いマンガです。
まだ見たことのない人、見たけどよくわからなかった人はゼヒこの部分を考えながら読んでみることをお勧めします。